在米主婦の旅の記録

旅好きの気ままな旅の記録

マエストロ ソコロフを探して

今年、スペインに行くことにしたのは、ロシア人ピアニスト、ソコロフの演奏を聴くためでした

 

以前は日本でもコンサートをされていたようですが、ここ最近は母国ロシアとヨーロッパでしか公演活動をされていないようで、もちろん、アメリカにも来られません。噂では飛行機がお嫌いだとか

 

エストロの演奏を聴くためにはこちらから聴きに行くしかありません。待っていてもその日は来ない

 

出来る限り、演奏を聴きに旅をしようではないか、とコロナ流行前に夫婦で決断しました。でも結局一度行ったものの、その後の疫病の流行であえなく行けずじまいになってしまいました

コロナの制約もなくなり、晴れ晴れしい気分で旅行が出来るようになった2023年。いよいよまたマエストロを追いかけることが出来る☺

 

ヨーロッパ中でかなりの数の公演をされるので、日程を組むのはそれほど難しくはありません。どの国のどの町で聴きたいかと、EU圏外のファンは問われているかのようなスケジュールなのです。一体どなたが会場を決められているのでしょうか?マエストロご本人があの町に行きたいなと仰るのでしょうか?

 

今回我々が選んだ地は、ルネッサンスの面影が美しく残る小さな町。その町の文化施設で開催されるコンサートです

 

コンサートがなければ通り過ぎていた小さき町。スペインが大好きな夫も知らない土地でした

 

そのウベダには中世の病院を改装した美しい趣たっぷりの文化施設がありました

goo.gl

どなたの計らいか分かりませんが、なんとも素敵ではありませんか?

世界的に有名で、天才と呼んでもなんら差支えのないピアニストが中世の小さな町にわざわざ演奏に来る-でも実のところ、わざわざではなく、都会のコンサートホールでは味わうことのできない、美しくて歴史的価値のある会場が時を越えて奏者を待っているのです

 

私達もその恩恵に預かることが出来ました

コンサートは21時から。開店の遅いレストランで食事していては間に合わないのでバーで軽く腹ごしらえをして向かいました

21時とは思えない、明るさ!

今回、奇跡的にピアノ前の最前列が一席だけ空いていて、迷わずこの席を取ることにしました(ただしもう一枚も5列目!)。夫とは席が離れてしまいますが、前半、後半で席を交替して楽しむことにしたのです。もちろん、その価値はありました!!

 

音楽のプロでもなく、ピアノが弾ける訳でもないので、ただの素人の感想ですが、繊細な指使いが、柔らかく滑らかに鍵盤の上で流れていく様子を見ながら、音楽を楽しむことが出来るのは、本当に、この世の至福だと思います

 

前半、私の隣には簡易椅子に座ってマエストロを描く絵師さんがいらっしゃいました。鉛筆で的確に演奏中のマエストロを捉えていく様子を横目で追わずにはおられませんでした。どこかに発表されたのでしょうか?完成した絵を写真に収めさせて頂きたかったのですが、そんなことはとても頼めず、こっそり目に焼き付けました

 

夫も一目、その絵を見たかったそうです。残念💦

休憩時間中は館内の散策をしました

見ごたえたっぷり。とても美しい建物でした

こんな美しい文化施設で音楽が聴けて町の人と交流が出来るとはなんとも贅沢だなぁと羨ましく思いながらここに集っている方たちを眺めていました。ちらほらとヨーロッパの音楽ファンをお見かけしましたが、このコンサートに駆けつけているほとんどは地元の人達

 

古いものが美しいまま、きちんと維持されていき、現代に合うように活用されている。そしてその価値を知っている天才がわざわざ演奏にやってくる......

 

考えたらなんと機能的な循環なんだろうと思わずにはいられません

 

ここには世間が驚く目新しいものはないのかもしれませんが、大切なことが詰まっているような、そんな場所でした!

コンサート後半、夫は最前列で何度も涙を流したそうです。私も何度も胸が熱くなって、一度、涙が出ました😿

 

この夜、私たちは類まれな環境で美しい音色を堪能することが出来ました

アメリカからはるばる来る価値以上のものをもらって胸がいっぱい

 

帰り道、思わず夫に、これ以上人生に何が必要?もうなんにもいらないね

今日死んでしまっても悔いはないわぁ

そんな風に思った最高の一夜でした

(NYで待っている我が🐶が寿命を全うするまでは我々が先にいくことは出来ませんが💦)

コンサート帰り。真夜中のウベダ。レストランやアイスクリーム店がまだ営業していて驚いた(土曜日だったから?)